「酒は百薬の長」という言葉をよく耳にします。中国古代の史書「漢書」から出た言葉ですが、広辞苑にも「適度な酒はどんな薬にもまさる効果があるという意」と載っています。では「適度なお酒」とは、どのようなものでしょうか。ご自身の飲み方を振りかえり、適度なお酒の量や飲み方について考えてみませんか。
飲酒の基礎知識
飲んだお酒は、体の中でどうなるの?
アルコールは、肝臓で分解され、まずアセトアルデヒドという物質がつくられます。アセトアルデヒドは、発がん性、アルツハイマー型認知症や糖尿病のリスクを高めるなど、身体にとって有害な物質です。
さらに、アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって分解されます。東洋人の場合は、この酵素の働きが強い人、弱い人、全く働かない人に分かれます。
あなたは、お酒を飲むと顔が赤くなるタイプですか?
顔や身体の皮膚が赤くなることを「フラッシング反応(少量の飲酒(ビールコップ1杯程度)で起きる、顔が赤くなる、吐き気がする、動悸がする、眠気、頭痛などを指します)」と言います。
フラッシング反応が起こる・起こらないは、遺伝によって決められた酵素の強さによるものです。従って、訓練で変わるものではありません。
酔いの正体
アルコール濃度が高い血液が脳に到達すると、脳の神経細胞に作用し、麻痺させます。そして、その結果として酔った状態になります。
ほろ酔い |
理性をつかさどる大脳皮質の活動が低下し、抑えられていた大脳辺縁系(本能や 感情をつかさどる)の活動が活発になる(理性の抑制が失われる) |
酩酊(めいてい) |
小脳まで麻痺が広がると、運動失調(千鳥足)状態になる |
泥酔(でいすい) |
海馬(記憶の中枢)が麻痺すると、今やっていること・起きていることを記憶 できない状態になる |
昏睡(こんすい) |
脳全体に麻痺が広がり、呼吸中枢(延髄)も危ない状態に。最悪の場合、死の危険が! |
参考)公益社団法人アルコール健康医学協会
飲酒量の単位
「酔い」をもたらすのはアルコールですが、お酒に含まれるアルコールの濃さ(強さ)は千差万別
です。アルコールの体や精神に対する影響は、飲んだお酒の量ではなく、摂取した純アルコール
が基準となります。
1 純アルコール量の計算
純アルコール量=飲酒量(ml)×アルコール度数(%)×0.8(アルコールの比重) |
*お酒に含まれる純アルコール量を知っていれば、飲んだお酒の影響や分解時間などが推定できます。
2 節度ある飲酒量
厚生労働省の「健康日本21」では、1日純アルコール量20g以内(日本酒1合程度)を
リスクの低い節度ある適度な飲酒量としています。
1日20グラム以内 | リスクの低い節度ある適度な飲酒量 |
1日40グラム以上 | 生活習慣病のリスクを高める飲酒量 |
1日60グラムを超える | 多量飲酒。各種傷病の発症確率が上昇する |
注1) 女性は男性よりも臓器障害を起こしやすいため、2分の1から3分の2程度
(約10~13g)の飲酒が適当です。
注2) 65歳以上の方は、より少量の飲酒が適当です。
注3) 飲酒習慣のない方に対し、この労の飲酒を推奨するものではありません。
【各酒類の純アルコール量換算表】
お酒の種類 | アルコール度数 | 純アルコール量 |
ビール(中ビン一本・500ミリリットル) | 5% | 20グラム |
日本酒(一合・180ミリリットル) | 15% | 22グラム |
ウイスキー(ダブル・原液60ミリリットル) | 40% | 19グラム |
焼酎(一合・180ミリリットル) | 25% | 36グラム |
ワイン(一杯・120ミリリットル) | 12% | 12グラム |
普段飲むお酒の純アルコール量を計算してみましょう。
純アルコール量=飲酒量×(アルコール度数÷100)×0.8
例1.チューハイ350ミリリットル缶(アルコール度数・7%)を二本飲む場合。
純アルコール量=700×(7÷100)×0.8=39.2グラム
例2.ビール350ミリリットル缶(アルコール度数・5%)を三本飲む場合。
純アルコール量=1050×(5÷100)×0.8=42グラム
→例1、2ともに一日の適量を超えています。
習慣飲酒の影響
長年の習慣飲酒は、高血圧・高脂血症・肥満・糖尿病・痛風などの生活習慣病を招きます。
また、臓器障害も肝臓だけでなく、脳・歯・食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・すい臓・心臓・血管・骨と全身に及びます。
リスクが高まるのは、男性は一日平均純アルコール量40グラム(ビール中ビン二本)以上、女性は20グラム以上とされています。
お酒のカロリー知っていますか
お酒を飲み過ぎると、その分エネルギーも過剰摂取になりがちです。前述の例2・ビール350ミリリットル缶を三本飲んだ場合、アルコールから摂ったエネルギーを御飯に換算すると、100グラムの御飯(茶碗に軽く一杯程度)を茶碗に2.5杯分食べたことに相当します。最近お腹周りが気になる方、お酒の量は大丈夫ですか?
お酒と上手につき合うために
あなたの健康を守るルール
1 節度ある適度な飲酒を守りましょう(1日純アルコール20グラム以下)
2 食事と一緒にゆっくりと
3 濃いお酒は薄めて飲みましょう
4 週2日は休肝日をつくり、肝臓を休ませましょう
5 内服治療中は控えましょう
6 入浴・運動の前は、控えましょう
7 定期的に健診・がん検診を受けましょう
アルコールとメンタルヘルス
千歳市の自殺対策を御参照ください。
外部リンク
・習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(女性編)
https://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-alcohol-female.pdf?1708402586002
・習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(男性編)
https://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-alcohol-male.pdf?1708402740297
・e-ヘルスネット(厚生労働省) 飲酒
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol
この記事は、第3次千歳市健康づくり計画「適正飲酒啓発事業」に基づき掲載しています。
(参考:生活習慣病予防のための健康情報サイト 飲酒)