着衣着火とは
調理中にガスこんろの火が袖口に燃え移るなど、何らかの原因で着ている服に火が付くことを「着衣着火」といいます。
また、腹部などに燃え移ると大変危険で、重いやけどや死亡に至る場合があります。「着衣着火」は、ちょっとした不注意で誰にでも起こりうる現象であることから、火を取り扱う際は注意が必要です。
住宅内での「着衣着火」の原因となりやすいものは、ガスこんろ、ろうそく、ライター、ストーブ、たばこなどです。なかでも、ガスこんろによる事故が最も多く発生しています。
特に高齢者は被害の程度が重くなる傾向があり、理由として加齢に伴い身体機能が衰えるとともに、ガスこんろの青い炎が見えにくくなる要因がありますので、高齢者が火を取り扱う際は特に注意しましょう。
着衣着火の事故事例
具体的な事故事例を紹介すると、次のとおりとなります。
- やかんを火にかけガスこんろの奥に手を伸ばした時に着ていた服の腕部分に火が付いた。
- 仏壇のローソクの火を付けたまま供え物を下げようとした際に袖口に着火した。
- 首にスカーフを巻いたまま、ガスこんろに火を付けたら垂れ下がったスカーフに着火した。
- 調理中に換気のため窓を開けようと手を伸ばしたら、ニット製の着衣の腹部に着火した。
- 石油ストーブを囲んで話し込んでいたら洋服の裾が燃え出した。
- タバコを吸おうとしてライターに火を付けたら、首に巻いていマフラーに着火した。
- 屋外でたき火をしていたら、炎が風にあおられ洋服に火が付いた。
着衣着火を防ぐための注意点
着衣着火の事故から身を守るための注意点は、次のとおりです。
- 袖口に火が付く事例が多いので、特に調理するときは、燃えにくい防炎加工されているエプロンやアームカバーなどを使用する。
- ガスこんろなどの機器を使う際は、マフラーやストール類を外すように心掛ける。
- 火を取り扱うときは、裾や袖が広がっている着火しやすいので着用を避ける。
- 着衣の表面が起毛していたり、炎が燃え広がりやすい素材の衣類は、わずかな炎の着火で短時間に衣類の表面を炎が走る「表面フラッシュ現象」を引き起こし非常に危険です。燃えやすい素材の衣類を着ている時は十分気を付ける。
- 鍋等の底から炎がはみ出さないよう、適切な火力に調整する。
- ガスこんろの奥には調味料など、料理の途中で手に取る物を置くのはやめる。
- ガスこんろの火をつけたままにして、こんろ越しの作業はやめる。
着衣に着火した時の対処法
もし着衣に火が付いてしまったら、大きな炎を手で叩いて消すのは困難です。図早く脱げる場合は着火した服を脱ぎ捨ててください。脱げない場合はすぐに水で火を消してください。水道水や、浴槽の水など近くにある水を火にかけてください。
服が脱げず、身近に水がなかったら、慌てて走り回ったりせず、「ストップ、ドロップ&ロール」(止まって、倒れて、転がって)を行ってください。
これは、アメリカの消防士たちが考えて日本でも徐々に広まりつつある対処法です。アメリカでは「ストップ、ドロップ&ロール」(止まって、倒れて、転がって)という言葉をキーワードに子供のころから着衣着火への対処法を教育しています。
1 |
止まって両手で顔を覆う。(ストップ) |
2 |
地面に寝転ぶ。(ドロップ) |
3 |
横向きにゴロゴロ転がる。(ロール) |
※発行:日本消防検定協会