現在、野鳥の保護などが取り上げられるようになってきました。
しかし、野鳥がけがや病気になっていても診断・治療可能な獣医師は少なく、さらに野鳥を保護・収容できる施設も身近にほとんどないのが現状です。
こうした状況では、都市化の進む地域で野鳥の事故が多くなっており、これら野鳥の保護や手当を獣医師ではない人たちにも頼らざるを得ない状況にあります。
ここでご紹介することを、野鳥保護に少しでも役立てていただければ幸いと考えています。
1.弱った鳥を発見したら…
弱った鳥を発見したら、まずは体のチェックと収容場所の状況を把握しましょう。
(1)全身を見てから、体の各部を見ます。
- 出血がある
他の動物に襲われたか、事故に遭った可能性がある。 - 飛べない
弱っているか、翼のけがが考えられる。もしくは幼鳥の可能性もあり。 - 羽毛を膨らませている
病気や中毒の可能性がある。 - 目を閉じている
目を負傷している可能性がる。 - 翼をダラリとしている
翼の故障(骨折など)が考えられる。 - 両脚で立てない
病気(中毒)か脚の故障が考えられる。 - くちばしの先が欠けたり、曲がっている
衝突した可能性が高い。 - 胸の筋肉が落ちている(やせていないか)
衰弱している。
(2)収容場所の環境を見ます。
- ネコやキツネがカラスや猛禽類(ワシ・タカなど)近くにいた
襲われた可能性が高い。 - 窓ガラスの下などに落ちていた
衝突した可能性が高い。 - 道路上や道路脇にいた
交通事故に遭った可能性が高い。 - 電線の下に白鳥等がいた
電線に接触した可能性が高い。 - 田畑にうずくまっていた
農薬などの毒物による可能性が高い。
2.野鳥のつかみ方
人間が野鳥をつかんだだけで、相当なストレスを与えます。
つかむのは極力短時間の必要最小限にとどめ、次のことに注意しましょう。
- 両手で、左右の翼を胴体に保定します。
- きつく胴体を持つと野鳥が呼吸ができなくなるので注意しましょう。
- つかんだ野鳥は絶対に顔の近くへ持ってこないようにしましょう。目を攻撃される恐れがあります。
- 猛禽類・モズ・キツツキ等のクチバシは鋭く、攻撃されるとけがをする恐れがあるので、あらかじめ布等を鳥に噛ませておく方法があります。
- 猛禽類やフクロウ等の足の爪は鋭く、握力も非常に強いです。雑菌も多いため、十分に注意を払ってください。厚手の革手袋で触れば安全です。
- トビやカラス類等は破傷風菌を持っていることがありますので、絶対に噛み傷や引っかき傷などを舐めないでください。ついた傷口は消毒液で消毒し、治療してください。
3.野鳥の運び方
長時間、人間が野鳥を捕まえておくと大きなストレスになるので、できれば次の方法で運搬します。
- 段ボールに入れて運ぶのが最も良い方法です。
- 暗くすると暴れなくなることがあります。
白鳥や猛禽類は、頭に布を被せて暗くすると、静かになります。 - 暴れて傷口を広げる可能性のある時は、布や幅の広いヒモで翼をくるむように縛っておきます。
- 段ボール等が無い場合は、衣類や布等でくるんで運ぶのも一つの方法です。
4.応急処置の方法
衰弱・負傷した野鳥を保護したとき、まずしなければならないことは安静と保温です。餌を与えるのは野鳥が落ち着いてからにしましょう。
(1)弱っている野鳥を保護したら…
- まずは、『気付け』の意味で、水(5~10%ブドウ糖液なら、なお良い。)を1~2滴スポイトで与えましょう。
与え方は、気管に入ると命に関わりますので、クチバシの隙間にスポイトで1滴だけ垂らすようにします。 - ダンボールに入れて安静にするのが最適です。ダンボールには5ミリ程度の空気穴を数カ所以上開けてください。鳥かごは外が見えるため、人に慣れていない野鳥が暴れることがあります。やむをえず鳥かごを使う場合は、毛布などで覆いましょう。
- ダンボールの大きさについては翼を広げることができる程度が最良です。大きすぎると鳥が暴れて弱りやすく、小さいと翼を痛めてしまいます。
- 止まり木に止まれるようであれば、ダンボール内でダンボールの両端に刺して取り付けます。床には新聞紙を敷くと良いです。
止まり木に止まれないほど弱っている場合は、止まり木は取り付けずに保温のため新聞紙等を短冊状に切って敷きます。糞で羽毛を汚すと衰弱の原因にもなりますので、頻繁に取り替えるようにしましょう。 - ダンボール内は30度くらいに温めます。鳥の体温は40~41度ありますので室温をかなり高めにします。
また、ペットボトルや空き瓶に湯を入れ、タオルでくるんで段ボール内に入れる方法もあります。市販されているカイロなどは酸素欠乏等の恐れがありますので、絶対に使わないでください。 - 鳥が落ち着くまでは、水や餌を絶対に置かないようにしましょう。体を汚し、衰弱させる原因になります。
(2)窓ガラスや車と衝突した野鳥を保護したら…
窓ガラスや車と衝突した鳥は、一見元気に見えても体のどこかを負傷している場合があります。特に頭部を強打して脳震盪を起こしている場合が多いです。まず、重傷か軽傷かを判断します。
軽傷の場合
- まず、外傷がないか確認します。小さい傷があるようなら消毒液で消毒します。小さな傷は空気に触れると止まりますが、出血箇所を15~20秒押さえることで、たいてい止まります。
- ダンボール箱に入れて保温し、暗くして安静にします。
- 2~3時間ほどで回復するので、回復後1時間程度を目安に餌や水を与えます。
- 完全に回復したら放鳥します。回復が早ければ、その日か翌日には放鳥できます。
重傷の場合
- 大きな傷(骨折など)があったり、2~3時間で回復しない場合は、獣医師に診てもらう必要があります。
獣医師に診てもらう方が良い場合
個人では治療や保護が難しい場合があります。次の場合は、獣医師に診てもらう必要があります。
- 傷が大きい場合や大量に出血している場合。
傷口を縫ったり、感染症を防ぐ必要があります。 - 翼や足を骨折している場合。
- 目を負傷している場合。
- 1~2日経っても元気にならない場合。病気の可能性があります。
- 農薬や鉛等の中毒の可能性がある場合。平衡感覚の異常や痙攣などの症状が見られます。鉛中毒の場合は、便の色にも異常があり、緑色便となります。
- 白鳥や大型の猛禽類などで、すぐに回復しそうもない場合。
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