はじめに
令和5年第2回定例市議会の開会にあたりまして、令和5年度の教育行政執行方針を申し上げます。
少子高齢化の進展や社会経済のグローバル化、Society5.0社会の到来など、我が国の社会情勢は、大きな変革期を迎えており、未来を担う子どもたちが、たくましく生きていけるよう学校・家庭・地域が一体となった「人づくり」を進めることが、一層重要となっております。
こうした動向を踏まえ、学校教育の推進にあたっては、国が「令和の日本型教育」として示している、児童生徒1人1人に応じた個別最適な学びと、他者との意見交換などを通じた協働的な学びを一体的に充実させ、学習指導要領に定める「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善への取組を進めていく必要があります。
また、生涯学習の充実にあたっては、市民一人一人が生涯にわたり、あらゆる機会に、あらゆる場所で学習することができ、学びを通して、まちづくりで活躍する人材を育む『生涯学習社会の構築』を進めていく必要があります。
これらの状況を踏まえ、『千歳市教育振興基本計画』に基づき、教育活動のさらなる充実に取り組んでまいります。
教育行政の基本姿勢
ここで、教育行政に臨む基本姿勢について申し上げます。
一つ目は、『未来を拓く人づくり』であります。
急速に変化する社会情勢に対応し、自立してたくましく生きることができ、千歳の未来を託すことができる人づくりを目指します。
二つ目は、『つながりの教育による人づくり』であります。
学校、家庭、地域が連携し、学びでつながり、学んだ成果を生かすことができる機会を整備することで、地域社会全体の教育力を高めるとともに、学びでつながる人づくりを目指します。
三つ目は、『ふるさと千歳を育む人づくり』であります。
自分たちが住む地域の歴史や文化のよさを知り、ふるさとに対する誇りと愛着を育み、様々な人と協働し、地域の課題解決や活性化に貢献し、ふるさととともに生きる教育を目指します。
教育重点施策
次に、令和5年度の教育重点施策について申し上げます。
第1に、『確かな学力の向上』であります。
確かな学力の育成のためには、基礎的な知識及び技能を確実に習得させ、それらを活用して課題を解決するための思考力、判断力、表現力を育むとともに、主体的に学習に取り組む姿勢や人間性を養うことが求められており、こうした教育の基盤として、読解力、記述力などの言語能力の向上が重要であるとされております。
本市の児童生徒については、全国学力・学習状況調査において、記述式の問題の正答率が全国平均を大きく下回っており、「読解力」と「記述力」に課題があると捉えております。
これらの課題を解決するためには、1人1人が考え、自身の考えを説明し互いに意見を交換する「探求型・対話型」の授業づくりが重要であり、各小中学校においては、教職員研修や学習者用コンピュータ等のICT機器の利活用を一層充実させるほか、千歳市学力向上検討委員会の提言などを踏まえ、授業改善を徹底してまいります。
第2に、『教育環境の整備』であります。
学校における安全・安心な教育環境を確保するため、校舎・講堂の計画的な改修に取り組むとともに、児童生徒が暑さにより体調を崩した際、適切な応急処置ができる環境を整備するため、令和5年度及び6年度の2か年で、保健室にエアコンを設置してまいります。
第3に、『特別支援教育の充実』であります。
「千歳市の特別支援教育の推進に係る基本方針」に基づき、みどり台小学校に「知的障がい」及び「自閉症・情緒障がい」の特別支援学級を新たに開設するほか、通級指導教室の充実に努めるなど、引き続き、個々のニーズに合った学びの場を選択できる教育を推進してまいります。
第4に、『生涯学習の推進』であります。
市民が活躍する生涯学習によるまちづくりを推進するため、各世代の生活課題や地域課題に対応した社会教育の充実に努めるとともに、セミナー等の開催にあたっては、対象や内容に応じて、対面方式のほか、オンライン方式やハイブリッド方式で実施するなど、参加機会の向上を図ってまいります。
また、まちの魅力を高め、心を豊かにする文化芸術の振興と文化財の保護・継承を進めてまいります。
主な施策
次に、「千歳市教育振興基本計画」の基本理念を実現するための6つの基本目標について、主な施策を申し上げます。
第1は、『社会で生きる力を育む教育の推進』であります。
「学年・学級経営」については、教員との信頼関係や学級内のより良い人間関係が、児童生徒を育成するための基盤であることから、教職員による日常的な観察のほか、ハイパーQU検査による客観的な分析を活用するなど、引き続き、学年・学級経営の改善に努め、互いに認め合い、高め合う親和的な学級づくりを進めてまいります。
「確かな学力の育成」については、授業改善の徹底と検証のほか、学習支援員等による算数・数学科の習熟度別少人数指導を一層推進するとともに、電子黒板、デジタル教科書の更新を進めるほか、AI搭載型のデジタルドリルを導入し、授業や家庭学習において、学習者用コンピュータを有効に活用できる環境を整備するなど、学習指導の充実を図ってまいります。
「外国語教育」については、引き続き、デジタル教科書や外国人英語指導助手(ALT)の活用などにより、授業の充実を図るとともに、小学校6年生を対象に実施している「英検ESG」や、中学校で実施している「英検IBA」により英語の習得状況を客観的に把握するなど、授業改善や英語力の向上に取り組んでまいります。
「情報教育」については、プログラミング教育や情報モラル教育などを通じて、児童生徒がICT機器を適切・安全に使用できる情報活用能力の育成に取り組むとともに、研修の実施などにより、引き続き、教員のICT活用能力の向上に努めてまいります。
第2は、『豊かな心と健やかな体を育む教育の推進』であります。
「いじめ・不登校」については、いじめは絶対に許されるものではなく、どの学校でも起こりうるものであるという確固たる認識のもと、いじめの未然防止、早期発見・迅速な対応に努め、その根絶に向けて学校・家庭・地域等と連携し、取り組んでまいります。
また、不登校の児童生徒への対応については、教員とスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが児童生徒・保護者の悩み、不安等の情報を共有するなど、組織的な支援を行ってまいります。
青少年非行防止については、青少年の問題行動の未然防止などに取り組むほか、SNSの不適切な利用により、いじめや犯罪に発展しないよう、安全なインターネットの使い方の指導や、家庭でのルールづくりの啓発など、インターネットに関するトラブルの未然防止の取組を継続してまいります。
「ふるさと教育」については、本市や北海道の文化、人々の生活に直接触れたりすることなどの教育活動を推進するほか、小学校社会科副読本「私たちの千歳」を活用するなど、郷土に対する愛着や誇りを育む、ふるさと教育の充実を図ってまいります。
「読書活動」については、「第3次千歳市子どもの読書活動推進計画」に基づき、子どもたちの読書活動の充実を図るほか、学校図書館司書については、配置日数を増やすなど、読書相談や調べ学習でのアドバイスをはじめとする学校図書館機能のさらなる充実を図ってまいります。
「体力・運動能力」については、新体力テストの結果などを踏まえ、効果的な体育活動を普及啓発するなど、児童生徒の健やかな身体の育成に努めてまいります。
「食育」については、食に対する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けさせるため、栄養教諭を中心とした食に関する指導を推進し、食育の充実を図ってまいります。
学校給食については、急激な物価高騰に対応するため、昨年度に引き続き、物価高騰分の補助を実施するとともに、児童生徒に必要なエネルギー量と栄養価を満たす給食を継続的に提供していくため、給食費の改定について検討を進めてまいります。
また、学校給食費の取り扱いについては、令和6年度からの公会計への移行に向け、会計システムの導入など諸準備を進めてまいります。
新学校給食センターの整備については、「千歳市新学校給食センター整備に向けた基本構想(改訂版)」に基づき、民間事業者などからのサウンディング調査や、建築面積・構造、調理機器の配置等の精査など、より安全で安心な学校給食の提供に向け、「新学校給食センター整備基本計画」の策定に取り組んでまいります。
第3は、『学びを支え、つなぐ教育環境の充実』であります。
「学校運営」については、学校指導訪問を通じて、カリキュラムマネジメント充実・強化、授業改善などへの指導・助言を行うほか、「千歳市立学校における働き方改革推進計画(第2期)」を踏まえ、時間外勤務時間の客観的な記録、ICTを活用した業務の効率化などに取り組んでまいります。
また、部活動の地域移行については、将来にわたり生徒がスポーツ・文化芸術活動に親しむことができる環境の整備や、部活動指導の負担軽減による教員の働き方改革に向け、「千歳市部活動地域移行推進協議会」を設置し、具体的な検討を進めてまいります。
「学びのセーフティネットの構築」については、経済的理由で教育の機会が失われることのないよう、引き続き、就学援助制度の周知を行うなど、必要な支援に努めてまいります。
また、給付型奨学金については、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して拡大した交付人数枠を維持し、修学・進学への意欲・能力がある学生生徒への支援を継続してまいります。
「家庭教育支援」については、千歳市PTA連合会との連携による「家庭生活宣言」の普及啓発等を通じ、児童生徒の規則正しい生活習慣や学習習慣、社会生活ルールやマナーの習得を目指してまいります。
「学校と地域の連携・協働」については、学校運営協議会(コミュニティスクール)の取組を推進し、学校運営の改善を図るとともに、「地域学校協働活動」として、水泳、スケート、スキー等の授業を地域人材が支援するなど、「地域と共にある学校」づくりに取り組んでまいります。
また、児童生徒を犯罪や事故から守り、登下校等の安全を確保するため、「千歳っ子見守り隊」の取組を推進するなど、子どもたちの安全確保に努めてまいります。
「学校段階等間の連携・交流」については、各学校段階の円滑な接続を図るため、子ども園等と小学校では、子どもの成長に関する情報交換や交流の機会を設けるなど、連携を図るとともに、小中学校においては、「小中連携・一貫教育実施要領」のもと、目指す子ども像を共有し、引き続き、義務教育9年間を見通した教育活動を進めてまいります。
第4は、『市民が活躍する生涯学習によるまちづくりの推進』であります。
「多様な主体の連携による学び合いと交流の場」については、「千歳学出前講座」や「ちとせを学ぶスタンプらりー事業」の登録講座の拡充を図るほか、生涯学習まちづくりフェスティバル「ふるさとポケット」などを開催し、市民活動団体の交流の場を提供してまいります。
「市民活動交流センター」については、「市民活動講座」や「ミナクールサロン」の開催など、利用者のニーズにあわせて、市民活動の活性化を図ってまいります。
「地域と学校の連携による地域の教育力を高める活動」については、地域学校協働活動の取組を推進するため、協働活動コーディネーターを計画的に増員し、地域と学校の連携を深め、子どもたちの豊かな学びや健やかな成長を支える環境づくりに努めてまいります。
「学んだ成果を地域で生かす活動」については、市民が「千歳学出前講座」の講師や「地域学校協働活動」などのボランティアとして活躍する場を設け、市民の知識等を生かした教育活動の充実に努めてまいります。
第5は、『各世代の生活課題や地域課題に対応した社会教育の充実』であります。
「乳幼児期からの家庭教育を支える学び」については、引き続き、「バンビはぐくみプログラム」として子育て中の親に育児知識の習得と情報交換の場を提供するほか、「家庭教育セミナー」を開催するなど、家庭の教育力を高めるための支援を行ってまいります。
「青少年の自立と成長を育む学び」については、公益財団法人千歳青少年教育財団と連携し、自然体験教室や宿泊学習など各種教育事業を実施するほか、指宿市との青少年相互交流事業については、これまでの3年間はオンライン方式で実施してきましたが、4年ぶりに訪問交流を再開してまいります。
「成人期や高齢期を誰もが豊かに過ごす学び」については、「市民教養セミナー」を開催するほか、高齢者の学習機会として、「千歳高星大学」や「千歳高星大学大学院」、「若返り学園」を実施してまいります。
「読書環境の充実」については、市立図書館の図書資料の充実に努めるほか、インターネットなどを活用した図書の貸し出し予約など、引き続き、利用者の利便性向上に取り組むとともに、「図書館まつり」については、市立図書館開館35周年記念事業として、講演会やオープンカフェなどを実施してまいります。
第6は、『まちの魅力を高め、心を豊かにする文化芸術の振興と文化財の保護・継承』であります。
「文化芸術に親しむ環境の整備」については、北ガス文化ホールにおける音楽・演劇などの公演や、市民ギャラリーにおける絵画・写真等の作品展など、市民ニーズを反映した魅力ある事業を実施してまいります。
「文化財の保存と調査・研究及び継承」については、遺跡の保護に努めるとともに、市指定無形文化財である「アイヌの伝統的芸能と工芸技術」や「泉郷獅子舞」の保存・伝承活動を支援してまいります。
「文化財の活用」については、増加するキウス周堤墓群来訪者や市民の利便性向上を図るため、埋蔵文化財センターの休日開館を期間を定めて試行的に実施するほか、「体験学習会」や「史跡見学会」、「市内の遺跡等に関する企画展」などを開催し、身近に文化財に触れる機会の充実に努めてまいります。
「世界文化遺産登録と資産保護の取組」については、キウス周堤墓群のガイダンス施設や展示設備、園路、駐車場などの整備に向け、実施設計を進めてまいります。
むすび
以上、令和5年度の教育行政執行にあたっての方針と重点施策及び主な施策について申し上げました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、これまで学校教育活動、社会教育活動は大きく制限されてきましたが、今後、それらの活動が積極的に実施され、未来を担う子どもたちや市民一人一人が、これまで以上に学ぶことの喜びを実感することができるよう、学校や家庭、地域、関係機関・団体などと連携を図り、市民の期待と信頼に応えることができる教育行政を推進してまいります。
市民並びに議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
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