設定

ふりがなをつける音声読み上げ
トップ記事ちとせくうこうのはじまり

ちとせくうこうのはじまり

 

1.PNG

 

皆は、千歳の空港が

どうしてできたか、知っていますか。

ときは昔、その頃の飛行機はとても珍しく、

北海道の空を飛ぶ飛行機は 全部見せ物でした。

そんな時代に、

空に夢を描いた人たちの思いが、

千歳空港のはじまりでした
 

2.PNG

ある日、千歳村の村長さんたちは、

村のはずれの、

サンナシの沢というところに、

盆栽にする木をさがしにでかけました。

そこは、作物が育たない火山灰地だったので、

「この広い土地を飛行場にできないものかなあ」と、

夢を語り合いました。
 

3.PNG

そのころの千歳のまちは、

室蘭街道の宿場町でしたが、

小さな、さびしいまちでした。

そんなさびしいまちに、

うれしいお知らせが、舞い込んできました。

それは今度、苫小牧から札幌までの鉄道が、

開通することになり、

千歳駅ができることになったというものでした。

4.PNG

さっそく、小樽新聞社が、汽車で千歳のまちに来て、

サケのふ化場を見学する旅行会を計画しました。

しかし、千歳のまちには、

食べ物屋さんがありませんでしたので

「旅行会の休憩に、お茶やお菓子を出してくれませんか」と

頼んだところ、「いいですよ。お昼ごはんもどうぞ。」と、

村の人たちは、歓迎しました。

5.PNG

喜んだ新聞社の人は、「それは、ありがたい。それでは、

旅行会の日に、千歳の空に飛行機を飛ばして、

歓迎ビラを、まくことにしましょう。」と、提案しました。

飛行機を見たことがなかった村の人は、

「それなら、ぜひ、飛行機を近くで見たいものだ。

着陸して見せてほしい。」と、頼みましたが、

「それは、飛行場がないので、無理です。」と、

断られてしましました。

 

6.PNG

でも、村の人たちが、あんまり熱心に、

お願いしたものですから、

「それなら、着陸できるところがないか、

見てあげましょう。」ということになりました。

それから、2,3日して、新聞社から、

酒井憲次郎さんという人が、車でやってきて、

「ここを整地すれば、飛行場になりますよ」と、

教えてくれました。

そこは、村長さんたちが、飛行場の夢を語った場所でした。

7.PNG

さっそく、村の人たちは、みんなで話し合いました。

「札幌に映画を見に行くと、汽車賃とお昼ごはんを合わせて、

3円かかる。でも、飛行場を1日1円20銭の給料として、

2日間、みんなが働いてくれると、映画よりも安く、

珍しい飛行機が見られるぞ。みんな、どうだい。」

「いいねえ、おれは協力するぞ。」

「私も飛行機が見たいわ。」

こうして、みんなで協力して、飛行場をつくることを決めました。

8.PNG

「よいしょ、よいしょ」

「わっしょい、わっしょい」

大人も子供も、いっしょになってみんなでがんばりました。

とても暑い日でしたが、ママチ川から、くんできた水が、

とてもおいしかったので、疲れも吹き飛びました。

そのおかげで、なんと、たった2日間で

村の人たちの手作りの飛行場ができました。

さあ、あとは、飛行機が来る日を待つだけです。

9.PNG

さて、待ちに待った飛行機が、飛んでくる日です。

手作りの飛行場には、千歳村だけではなく、

噂を聞いた隣まちからも、

たくさんの人が押し寄せていました。

「あ!」

はるか遠くに、豆粒のような飛行機が見えたかと思うと、

すぐに鳥の大きさになり、

ぐんぐん、ぐんぐん近づいてきました。

みんなは、手を振って飛び上がり、大喜びしました。

10.PNG

飛行機は、空に大きな輪をかいて、歓声に応え、

みんなでつくった飛行場に降りてきました。

プロペラから起きた風で、火山灰が、

「ぷぁー」っと、舞い上がり、

飛行機がとまると、大人たちは、

「わー」っとかけより、取り囲みました。

11.PNG

みんなが取り囲んだ飛行機から操縦士が降りてきました。

それは、飛行場づくりを教えてくれた酒井憲次郎さんでした。

「ようこそ、千歳村へ。」

村のみんなを代表して、女の子が、大きな花の輪を渡しました。

自分たちのつくった飛行場に、

本当に飛行機が着陸したので、みんな感激して、

胸が熱くなりました。

12.PNG

飛行機を見たいという、強い思いから、

みんなが協力してつくった手作りの飛行場。

そこに、酒井憲次郎さんが、操縦してきた

二枚羽のプロペラ機「北海」第一号が、

着陸したことが、千歳空港のはじまりなのです。

いま、新千歳空港は、

世界中の人が行き来する国際空港を目指して、

また、北海道の空の玄関として、活躍しています。

「北海」第一号について

 千歳の地に最初に降り立った飛行機。「名水ふれあい公園」に隣接する浄水場の管理棟に原寸大模型が展示されています。また、空港公園には、「北海」第一号のブロンズ像のほか、酒井操縦士のブロンズ像、村民顕彰の碑があります。

img084.jpg
「北海」第一号 原寸大模型(蘭越浄水場 管理棟)

空港開港80年記念「ちとせくうこうのはじまり」

発行:平成18年4月

制作:千歳航空協会

カテゴリー

公開日: